リスクコミュニケーションのための化学物質ファクトシート
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アセトニトリル

別   名 シアン化メチル、メチルシアナイド、エタンニトリル
PRTR政令番号 1-13 (旧政令番号:1-12)
C A S 番 号 75‐05‐8
構 造 式 アセトニトリル構造式
  • アセトニトリルは、有機化合物の原料や溶剤、分析用試薬など、幅広い用途に使われています。
  • 2010年度のPRTRデータでは、環境中への排出量は約140トンでした。主に事業所から排出されたもので、主に大気中へ排出されたほか、土壌へも排出されました。

■用途

 アセトニトリルは、常温で無色透明の液体で、揮発性物質です。アクリロニトリルを製造する際に副産物としてつくられます。水やアルコールと自由に混ざり、また塩化亜鉛などの一部の無機化合物も溶かすことから、医薬品、写真薬などの原料を合成する際の反応溶剤や精製溶剤として使われたり、石油精製における溶剤、農薬の溶剤、分析用試薬、電子部品の洗浄溶剤や電池の電解液などに使われています。また、アセトニトリルを原料として多くの有機中間体を生成することができることから、ビタミンB1などの医薬品、殺虫剤、香料や染料などの有機化合物の原料としても使われており、幅広い用途に用いられています。
 なお、アセトニトリルは、木材や草木の焼却によっても発生し、たばこの煙にも含まれています。

■排出・移動

 2010年度のPRTRデータによれば、わが国では1年間に約140トンが環境中へ排出されたと見積もられています。主に化学工業などの事業所から排出されたり、一部は農薬の使用に伴って排出され、主に大気中へ排出されたほか、土壌へも排出されました。この他、化学工業などの事業所から廃棄物として約2,700トン、下水道へ約31トンが移動されました。また、アセトニトリルはたばこの煙に含まれていることから、喫煙によって環境中へ排出される可能性がありますが、生成量が不明なため、排出量は推計されていません。

■環境中での動き

 大気中へ排出されたアセトニトリルは、化学反応によって分解されますが、半分の濃度になるには数ヵ月〜2年かかると計算されています1)2)。水中や土壌へ入った場合は、大気中へ揮発したり、微生物分解されると考えられます3)

■健康影響

毒 性 変異原性に関して、アセトニトリルは、細菌や生物細胞を使った試験管内の変異原性試験では、多くが陰性を示していますが、一部で染色体異常の誘発性を示す報告例があります2)。一方、経済協力開発機構(OECD)のガイドラインに従ったマウスの生体内試験では陰性が報告されています2)
 また、マウスにアセトニトリルを含む空気を13週間吸入させた実験では、前胃に限局性潰瘍が認められ、この実験結果から求められる呼吸によって取り込んだ場合のNOAEL(無毒性量)は168 mg/m3でした2)

体内への吸収と排出 人がアセトニトリルを体内に取り込む可能性があるのは、呼吸や飲み水によると考えられます。体内に取り込まれた場合は、代謝物に変化したり、あるいは変化しないまま、尿に含まれて排せつされたり、呼気とともに吐き出されます3)

影 響 呼吸によってアセトニトリルを取り込んだ場合について、(独)製品評価技術基盤機構及び(財)化学物質評価研究機構の「化学物質の初期リスク評価書」では、前胃に限局性潰瘍が認められたマウスの実験におけるNOAELと大気中濃度の測定値を用いて、人の健康影響を評価しており、現時点では人の健康へ悪影響を及ぼすことはないと判断しています2)。また、同評価書では、口から取り込んだ場合のNOAEL等は得られていませんが、上記の評価に口からの取り込み量を加えて評価し、この場合も、現時点では人の健康へ悪影響を及ぼすことはないと判断しています2)

■生態影響

 環境省の「化学物質の環境リスク初期評価」では、魚類の死亡を根拠として、水生生物に対するPNEC(予測無影響濃度)を10 mg/Lとしています1)。これまで得られた河川や海域の水中濃度はこのPNECよりも十分に低いため、この結果に基づけば水生生物への影響は小さいと考えられます。
 なお、(独)製品評価技術基盤機構及び(財)化学物質評価研究機構の「化学物質の初期リスク評価書」では、ミジンコの死亡を指標として、河川水中濃度の測定データ(不検出であり、検出下限値の1/2の値を用いた)を用いて水生生物に対する影響について評価を行っており、現時点では環境中の水生生物へ悪影響を及ぼすことはないと判断しています2)

性 状 無色透明の液体  水に溶けやすい  揮発性物質
生産量4)
(2010年)
国内生産量:約13,000トン (推定)
排出・移動量
(2010年度
PRTRデータ)
環境排出量:約140トン 排出源の内訳[推計値](%) 排出先の内訳[推計値](%)
事業所(届出) 74 大気 83
事業所(届出外) 12 公共用水域 4
非対象業種 14 土壌 14
移動体 埋立
家庭 (届出以外の排出量も含む)
事業所(届出)における排出量:約110トン 業種別構成比(上位5業種、%)
化学工業 94
自然科学研究所 3
倉庫業 2
高等教育機関 1
計量証明業 0
事業所(届出)における移動量:約2,800トン 移動先の内訳(%)
廃棄物への移動 99 下水道への移動 1
業種別構成比(上位5業種、%)
化学工業 95
自然科学研究所 3
食料品製造業 0
高等教育機関 0
計量証明業 0
PRTR対象
選定理由
変異原性
環境データ

大気

  • 化学物質環境実態調査:検出数17/17検体,最大濃度0.0012 mg/m3;[2001年度,環境省]5)

公共用水域

  • 要調査項目存在状況調査:検出数0/76地点(検出下限値0.003 mg/L);[2000年度,環境省]6)

地下水

  • 要調査項目存在状況調査:検出数0/15地点(検出下限値0.003 mg/L);[2000年度,環境省]6)

底質

  • 要調査項目存在状況調査:検出数0/24地点(検出下限値0.003 mg/kg);[2002年度,環境省]7)
適用法令等

注)排出・移動量の項目中、「−」は排出量がないこと、「0」は排出量はあるが少ないことを表しています。

■引用・参考文献

■用途に関する参考文献