リスクコミュニケーションのための化学物質ファクトシート
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メタクリル酸2-(ジメチルアミノ)エチル

別   名 2-ジメチルアミノエチルメタクリレート、2-(ジメチルアミノ)エチルメタクリレート
PRTR政令番号 1-418 (旧政令番号:1-318)
C A S 番 号 2867-47-2
構 造 式 メタクリル酸2-(ジメチルアミノ)エチル構造式
  • メタクリル酸2-(ジメチルアミノ)エチルは、塗料樹脂、接着剤、イオン交換樹脂、繊維処理剤、紙力増強剤や潤滑油添加剤の原料などに使われています。
  • 2010年度のPRTRデータでは、環境中への排出量は約0.44トンでした。すべてが事業所から排出されたもので、主に大気中へ排出されたほか、河川や海などへも排出されました。

■用途

 メタクリル酸2-(ジメチルアミノ)エチルは、水に溶けやすく、常温で無色透明の液体で、揮発性物質です。塗料樹脂、接着剤、イオン交換樹脂、繊維処理剤、紙力増強剤や潤滑油添加剤の原料として使われています。この他、ゴム配合剤(強度向上・安定剤)としても使われています。

■排出・移動

 2010年度のPRTRデータによれば、わが国では1年間に約0.44トンが環境中へ排出されたと見積もられています。すべてが化学工業などの事業所から排出されたもので、主に大気中へ排出されたほか、河川や海などへも排出されました。この他、化学工業の事業所から廃棄物として約12トン、下水道へ約0.003トンが移動されました。

■環境中での動き

 大気中へ排出されたメタクリル酸2-(ジメチルアミノ)エチルは、化学反応によって分解され、2〜4時間で半分の濃度になると計算されています1)。水中に入った場合は、酸素が十分ある状態では加水分解や微生物分解されると推定されています1)

■健康影響

毒 性 ラットにメタクリル酸2-(ジメチルアミノ)エチルを41〜52日間、口から与えた実験では、ヘモグロビン濃度の減少などの貧血性変化が認められ、この実験から求められる口から取り込んだ場合のNOAEL(無毒性量)は、体重1 kg当たり1日40 mgでした1)2)

体内への吸収と排出 人がメタクリル酸2-(ジメチルアミノ)エチルを体内に取り込む可能性があるのは、呼吸や飲み水などによると考えられます。体内に取り込まれた場合は、エステラーゼ(エステルを分解する酵素)によって加水分解され、メタクリル酸などの他の物質に変化します1)

影 響 食物や飲み水を通じて口からメタクリル酸2-(ジメチルアミノ)エチルを取り込んだ場合について、(独)製品評価技術基盤機構及び(財)化学物質評価研究機構の「化学物質の初期リスク評価書」では、貧血性変化が認められたラットの実験におけるNOAELと河川水中濃度及び魚体内濃度の推計値を用いて、人の健康影響を評価しており、現時点では人の健康へ悪影響を及ぼすことはないと判断しています1)。また、呼吸から取り込んだ場合のNOAEL等は得られていませんが、上記の評価に呼吸からの取り込み推定量を加えて評価し、この場合も、現時点では人の健康へ悪影響を及ぼすことはないと判断しています1)

■生態影響

 メタクリル酸2-(ジメチルアミノ)エチルは、藻類に対する有害性からPRTR制度の対象物質に選定されていますが、現在のところ、わが国では信頼できる水生生物に対するPNEC(予測無影響濃度)はまだ算定されていません。
  なお、(独)製品評価技術基盤機構及び(財)化学物質評価研究機構の「化学物質の初期リスク評価書」では、ミジンコの繁殖阻害を指標として、河川水中濃度の推計値を用いて水生生物に対する影響について評価を行っており、現時点では環境中の水生生物へ悪影響を及ぼすことはないと判断しています1)

性 状 無色透明の液体   水に溶けやすい   揮発性物質
生産量
(2010年)
国内生産量:公表データなし
排出・移動量
(2010年度
PRTRデータ)
環境排出量:約0.44トン 排出源の内訳[推計値](%) 排出先の内訳[推計値](%)
事業所(届出) 100 大気 81
事業所(届出外) 0 公共用水域 19
非対象業種 土壌
移動体 埋立
家庭 (届出以外の排出量も含む)
事業所(届出)における排出量:約0.44トン 業種別構成比(上位5業種、%)
化学工業 100
事業所(届出)における移動量:約12トン 移動先の内訳(%)
廃棄物への移動 100 下水道への移動 0
業種別構成比(上位5業種、%)
化学工業 100
PRTR対象
選定理由
生態毒性(藻類)
環境データ
適用法令等

注)排出・移動量の項目中、「−」は排出量がないこと、「0」は排出量はあるが少ないことを表しています。

■引用・参考文献

■用途に関する参考文献

  • (独)製品評価技術基盤機構・(財)化学物質評価研究機構「化学物質の初期リスク評価書Ver.1.0」((独)新エネルギー・産業技術総合開発機構 委託事業、2008年公表)
    http://www.safe.nite.go.jp/risk/files/pdf_hyoukasyo/318riskdoc.pdf
  • 化学工業日報社『16112の化学商品』(2012年1月発行)