リスクコミュニケーションのための化学物質ファクトシート
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作成年: 2012年

1,1´‐エチレン‐2,2´‐ビピリジニウム=ジブロミド

別   名 ジクワット、ジクワットジブロミド
管理番号 63
PRTR政令番号 1-083(化管法施行令(2021年10月20日公布)の政令番号)
C A S 番 号 85-00-7
構 造 式 1,1’‐エチレン‐2,2’‐ビピリジニウム=ジブロミド構造式
  • 1,1´-エチレン-2,2´-ビピリジニウム=ジブロミドは、ジクワットとも呼ばれ、畑、水田、公園や駐車場などで除草剤などとして使われている農薬の有効成分(原体)です。
  • 2010年度のPRTRデータでは、環境中への排出量は約160トンでした。ほとんどが農薬の使用に伴って排出されたもので、ほとんどが土壌へ排出されました。

■用途

 1,1´-エチレン-2,2´-ビピリジニウム=ジブロミド(以下「ジクワット」と表記します)は、水に溶けやすく常温で無色透明または黄色の固体で、除草用などに使われる農薬の有効成分(原体)です。通常、希釈された液剤か、1,1´-ジメチル-4,4´-ビピリジニウム=ジクロリド(別名パラコート)を混合させた液剤に製剤化したものを、水でうすめて使われています。
 ジクワットは、植物の茎や葉の部分から吸収され、植物の葉緑体が光合成をする際に、光合成に影響を及ぼして植物細胞を損傷し、その作用によって植物を枯らします。葉緑体をもつ幅広い植物に効果があるため、野菜や果樹などの畑地、耕起前の水田のほか、公園や駐車場などでも除草剤として使われています。また、バレイショの栽培では、効率よく収穫作業を行うために、収穫前に薬剤を散布して茎葉を枯らす目的にも利用されています。

■排出・移動

 2010年度のPRTRデータによれば、わが国では1年間に約160トンが環境中へ排出されたと見積もられています。ほとんどが農薬の使用に伴って排出されたもので、ほとんどが土壌へ排出されました。この他、化学工業の事業所から廃棄物として約0.12トンが移動されました。

■環境中での動き

 ジクワットそのものは日光によって 分解され、2日で半分の濃度になるとされていますが1)、土壌へ排出されたジクワットは、土壌粒子に速やかに吸着され、不活性化されます2)。ジクワットの土壌中での残留濃度は、繰り返し散布した場合では土壌1 kg当たり0.2〜3.9 mgとされ、畑を使った試験では、1回の散布で、15日後の残留は、土壌1 kg当たり0.1 mg以下であったと報告されています2)。水中に入った場合は、浮遊している細かな粘土鉱物や沈殿物などに吸着され、2〜4週間で取り除かれるとされています1)

■健康影響

毒 性 ラットに2年間、ジクワットを口から与えた実験では白内障の発症が認められ、この実験結果から求められる口から取り込んだ場合のNOAEL(無毒性量)は、体重1 kg当たり1日0.19 mgでした1)
 この実験結果から、ジクワットのADI(一日許容摂取量)は体重1 kg当たり1日0.0019 mgと算出され3)、これに基づいて水道水質管理目標値が設定されています。
 なお、労働安全衛生法による管理濃度、日本産業衛生学会による作業環境許容濃度は設定されていませんが、米国産業衛生専門家会議(ACGIH)は1日8時間、週40時間の繰り返し労働における作業者の許容濃度を0.1 mg/m3と勧告しています4)

体内への吸収と排出 人がジクワットを体内に取り込む可能性があるのは、食物や飲み水によると考えられます。体内に取り込まれた場合は、ラットの実験によると、代謝物に変化し、1〜2日で尿に含まれて排せつされたと報告されています2)

影 響 水道水から水道水質管理目標値を超える濃度のジクワットは検出されておらず、飲み水を通じて口から取り込むことによる人の健康への影響は小さいと考えられます。食物からのジクワットの摂取量に関する情報は現在のところ得られていません。

■生態影響

 現在のところ、わが国では水生生物に対する信頼できるPNEC(予測無影響濃度)は算定されていません。

性 状 無色透明または黄色の固体   水に溶けやすい
生産量5)
(2010年)
国内生産量:−(不明または出荷・生産なし)
輸 入 量:約270トン(原体),約62トン(製剤)
排出・移動量
(2010年度
PRTRデータ)
環境排出量:約160トン 排出源の内訳[推計値](%) 排出先の内訳[推計値](%)
事業所(届出) 0 大気 0
事業所(届出外) 公共用水域
非対象業種 100 土壌 100
移動体 埋立
家庭 (届出以外の排出量も含む)
事業所(届出)における排出量:約0.001トン 業種別構成比(上位5業種、%)
燃料小売業 100
事業所(届出)における移動量:約0.12トン 移動先の内訳(%)
廃棄物への移動 100 下水道への移動
業種別構成比(上位5業種、%)
化学工業 100
PRTR対象
選定理由
経口慢性毒性,作業環境許容濃度
環境データ

水道水

  • 原水・浄水水質試験:水道水質管理目標値超過数;原水0/903地点,浄水0/799地点;[2009年度,日本水道協会]6)7)

公共用水域

適用法令等
  • 水道法:水道水質管理目標値0.005 mg/L以下(農薬類;ジクワット)
  • 食品衛生法:残留農薬基準 例えば,米(玄米)1 ppm,ばれいしょ0.05 ppm
  • 農薬取締法:登録農薬

注)排出・移動量の項目中、「−」は排出量がないこと、「0」は排出量はあるが少ないことを表しています。
※本物質の生産量は2010年農薬年度(2009年10月〜2010年9月)のものです。

■引用・参考文献

■用途に関する参考文献

■適用作物に関する情報