リスクコミュニケーションのための化学物質ファクトシート
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作成年: 2012年

2,6-キシレノール

別   名 2,6-ジメチルフェノール、2,6-DMP、2-ヒドロキシ-m-キシレン
管理番号 79
PRTR政令番号 1-102(化管法施行令(2021年10月20日公布)の政令番号)
C A S 番 号 576-26-1
構 造 式 2,6-キシレノール構造式
  • 2,6-キシレノールは、他の化学物質の原料として使われ、ほとんどが耐熱性樹脂の原料に用いられています。
  • 2010年度のPRTRデータでは、環境中への排出量は約1.2トンでした。すべてが事業所から排出されたもので、大気中へ排出されたほか、河川や海などへも排出されました。

■用途

 2,6-キシレノールは、常温で白色または黄白色の固体です。他の化学物質の原料として使われ、ほとんどが変性PPE(ポリフェニレンエーテル)樹脂の原料になります。この他、難燃剤、エポキシ樹脂、抗酸化剤、抗かび剤などの原料として使われています。変性PPE樹脂は、強度、耐熱性などにすぐれているため、電気・電子部品や自動車部品に用いられています。
 なお、クレオソート油(カーボンブラックの原料や木材防腐剤として使われる)の中に、ごくわずかに2,6-キシレノールが含まれているとの情報があります。

■排出・移動

 2010年度のPRTRデータによれば、わが国では1年間に約1.2トンが環境中へ排出されたと見積もられています。すべてが化学工業などの事業所から排出されたもので、大気中へ排出されたほか、河川や海などへも排出されました。この他、化学工業の事業所から廃棄物として約120トン、下水道へ0.15トンが移動されました。

■環境中での動き

 大気中へ排出された2,6-キシレノールは、化学反応によって分解され、10時間以内で半分の濃度になると計算されています1)。環境水中での動きについては報告がありませんが、化審法の分解度試験では、微生物分解はされにくいとされています1)。しかし、酸素が十分ある条件下で、2,6-キシレノールでならして分解しやすいようにした活性汚泥(汚水を浄化する働きをもつ微生物のかたまり)を用いた実験では、容易に分解されています2)。また、2,6-キシレノールは、水中の粒子や水底の泥に吸着されやすいと推定されています2)

■健康影響

毒 性 ラットに体重1 kg当たり1日6 mgの2,6-キシレノールを8ヵ月間、口から与えた実験では、体重、血圧、血清及び内臓のSH基に有意な差が認められ、肝臓、腎臓や脾臓の組織で変性がみられました1)

体内への吸収と排出 人が2,6-キシレノールを体内に取り込む可能性があるのは、食物や飲み水、呼吸によると考えられます。体内に取り込まれた場合は、ウサギの実験では、ほとんどが代謝されて、尿に含まれて排せつされたと報告されています2)

影 響 食物や飲み水を通じて2,6-キシレノールを口から取り込んだ場合について、環境省の「化学物質の環境リスク初期評価」では、体重や血圧などの変化、肝臓、腎臓や脾臓への影響が認められたラットの実験結果に基づいて、無毒性量等を体重1 kg当たり1日0.06 mgとしています1)。2,6-キシレノールの食物中濃度(検出下限値0.001 mg/kg以下)や水中濃度から計算すると、人が口から取り込む量は最大で体重1 kg当たり1日0.000044 mg未満と予測されます1)。これは、上記の無毒性量等よりも十分に低く、食物や飲み水を通じて口から取り込むことによる人の健康への影響は小さいと考えられます。
 呼吸によって取り込んだ場合について、2,6-キシレノールの大気中濃度に関する測定結果はなく、人の健康への影響を評価できる情報も現在のところ報告されていません。
 なお、(独)製品評価技術基盤機構及び(財)化学物質評価研究機構の「化学物質の初期リスク評価書」では、口から取り込んだ場合、呼吸によって取り込んだ場合とも、適切な試験結果の報告がないため、人の健康影響を評価できないとしています2)

■生態影響

 環境省の「化学物質の環境リスク初期評価」では、ミジンコの繁殖阻害を根拠として水生生物に対するPNEC(予測無影響濃度)を0.0054 mg/Lとしています1)。これまで得られた河川や湖沼の水中濃度はこのPNECよりも十分に低いため、この結果に基づけば水生生物への影響は小さいと考えられます。なお、2,6-キシレノールは魚類に対する有害性からPRTR制度の対象物質に選定されていますが、上記のPNECは、PRTR選定の際に根拠とされた知見を評価に加えた上で設定されたものです。
 この他、(独)製品評価技術基盤機構及び(財)化学物質評価研究機構の「化学物質の初期リスク評価書」では、ミジンコの死亡を指標として、河川水中濃度の測定データ(不検出であり、検出下限値の1/2の値を用いた)を用いて水生生物に対する影響について評価を行っており、現時点では環境中の水生生物へ悪影響を及ぼすことはないと判断しています2)

性 状 白色または黄白色の固体
生産量
(2010年)
国内生産量:公表データなし
排出・移動量
(2010年度
PRTRデータ)
環境排出量:約1.2トン 排出源の内訳[推計値](%) 排出先の内訳[推計値](%)
事業所(届出) 88 大気 62
事業所(届出外) 12 公共用水域 38
非対象業種 土壌
移動体 埋立
家庭 (届出以外の排出量も含む)
事業所(届出)における排出量:約1.0トン 業種別構成比(上位5業種、%)
化学工業 100
事業所(届出)における移動量:約120トン 移動先の内訳(%)
廃棄物への移動 100 下水道への移動 0
業種別構成比(上位5業種、%)
化学工業 100
PRTR対象
選定理由
生態毒性(魚類)
環境データ

公共用水域

  • 化学物質環境実態調査:検出数6/18検体,最大濃度0.0000034 mg/L;[2006年度,環境省]3)
  • 要調査項目存在状況調査:検出数2/50地点,最大濃度0.000093 mg/L);[2001年度,環境省]4)
適用法令等

注)排出・移動量の項目中、「−」は排出量がないこと、「0」は排出量はあるが少ないことを表しています。

■引用・参考文献

■用途に関する参考文献

  • 化学工業日報社『16112の化学商品』(2012年1月発行)
  • (独)製品評価技術基盤機構・(財)化学物質評価研究機構「化学物質の初期リスク評価書Ver.1.0」((独)新エネルギー・産業技術総合開発機構 委託事業、2008年公表)
    http://www.safe.nite.go.jp/risk/files/pdf_hyoukasyo/062riskdoc.pdf