リスクコミュニケーションのための化学物質ファクトシート
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作成年: 2012年

フロン類

構造式:例 [CFC-11] [HCFC-22] [HCFC-124]
トリクロロフルオロメタン構造式 クロロジフルオロメタン構造式 2-クロロ-1,1,1,2-テトラフルオロエタン構造式
  • フロン類は、冷蔵庫、エアコンやカーエアコンの冷媒、断熱材の発泡剤、精密部品の洗浄剤などに使われています。
  • フロン類の一種であるCFCは、オゾン層を破壊する物質として、国内では1996年1月1日以降は原則として製造が禁止されています。
  • 2010年度のPRTRデータでは、環境中への排出量は合計で約22,000トンでした。空調機器の修理の際などに排出されたもので、すべてが大気中へ排出されました。

■フロン類とは

 フロン類とは、炭素、ふっ素、塩素と水素からなる化合物で、日本のみで使われる総称です。物理的、化学的に安定した性質があり、対流圏(地上から高度およそ10 kmくらいまでの範囲)の大気中では分解されにくく、放出されたあと数年から数百年も大気中に蓄積されます。
 フロン類は正式にはフルオロカーボンといい、CFC(クロロフルオロカーボン)、HCFC(ハイドロクロロフルオロカーボン)、HFC(ハイドロフルオロカーボン)などの種類があります。これらの表記の最初のCは塩素を、Fはふっ素を、後ろのCは炭素を、Hは水素を示しています。PRTR制度では、オゾン層を破壊する物質を対象としており、CFCとHCFCがこれに指定されています。
 CFCとHCFCは、モントリオール議定書に基づいて、生産や消費、貿易の規制などの国際的な取り組みが進められてきました。日本では、「特定物質の規制等によるオゾン層の保護に関する法律(オゾン層保護法)」によってCFCは1996年1月1日以降原則として生産が禁止され、HCFCは生産量が段階的に削減されています。それ以前に製造されたものは、現在でも使用されています。
 こうした規制により、HFCなどのオゾン層を破壊しない代替フロンが開発され、普及してきました。フロン類は地球温暖化の原因となる温室効果をもつ物質であることもわかっていますが、代替フロンにも温室効果があり、地球温暖化を促進する要因になるため、特にHFCは京都議定書の対象物質となっています。

PRTR制度の対象となっているフロン類

物質名 別名 管理番号 PRTR
政令番号
CAS番号 組成式 オゾン破壊
係数1)
トリクロロフルオロメタン CFC-11 288 1-330 75-69-4 CCl3F 1.0
ジクロロジフルオロメタン CFC-12 161 1-187 75-71-8 CCl2F2 1.0
トリクロロトリフルオロエタン CFC-113 284 1-326 26523-64-8 C2Cl3F3 0.8
ジクロロテトラフルオロエタン CFC-114 163 1-189 1320-37-2 C2Cl2F4 1.0
クロロペンタフルオロエタン CFC-115 126 1-150 76-15-3 C2ClF5 0.6
ジクロロフルオロメタン HCFC-21 177 1-204 75-43-4 CHCl2F 0.04
クロロジフルオロメタン HCFC-22 104 1-130 75-45-6 CHClF2 0.055
2,2-ジクロロ-1,1,1-トリフルオロエタン HCFC-123 164 1-190 306-83-2 C2HCl2F3 0.02
2-クロロ-1,1,1,2-テトラフルオロエタン HCFC-124 105 1-137 2837-89-0 C2HClF4 0.022
クロロトリフルオロエタン HCFC-133 106 1-138 1330-45-6 C2H2ClF3 0.02〜0.06
1,1-ジクロロ-1-フルオロエタン HCFC-141b 176 1-202 1717-00-6 C2H3Cl2F 0.11
1-クロロ-1,1-ジフルオロエタン HCFC-142b 103 1-129 75-68-3 C2H3ClF2 0.065
ジクロロペンタフルオロプロパン HCFC-225 185 1-212 422-56-0
507-55-1
C3HCl2F5 0.025
0.033

■用途

 フロン類の特徴のひとつは、圧力を加えたり減らすことによって、常温で容易に気体から液体、液体から気体に変化することです。この性質を利用して、フロン類は1930年に、米国で電気冷蔵庫の冷媒として開発された物質です。当時冷媒として使われていたアンモニア、クロロメタン(塩化メチル)などは可燃性や腐食性などがあり、毒性も強かったため、フロン類はそれに代わる物質として普及しました。
 また、比較的毒性が低いこと、不燃性であること、熱に対しても化学的にも安定で分解しにくいことなどの性質から、エアコン等の冷媒、電子部品等の洗浄剤、建築用や冷凍冷蔵機器の断熱材に使用される硬質ウレタンフォームなどの発泡剤、スプレーの噴射剤など、私たちの生活の中で広く使用されてきました。

PRTRの対象となっているフロン類の主な用途2)3)4)及び業界資料による

別名 主な用途
CFC-11 ビルの空調機などの冷媒、断熱材の発泡剤、ぜん息治療薬用噴霧吸入器の噴射剤
CFC-12 断熱材の発泡剤、業務用冷凍空調機器の冷媒、家庭用冷蔵庫の冷媒、飲料用自動販売機の冷媒、カーエアコンの冷媒、ぜん息治療薬用噴霧吸入器の噴射剤
CFC-13 冷媒、工業原料
CFC-112 電子機器や精密機器の洗浄剤
CFC-113 電子機器や精密機器の洗浄剤、工業原料
CFC-114 ぜん息治療薬用噴霧吸入器の噴射剤、スプレー噴射剤、工業原料
CFC-115 業務用冷凍空調機器の冷媒
HCFC-21 工業原料
HCFC-22 断熱材の発泡剤、業務用冷凍空調機器の冷媒、飲料用自動販売機の冷媒、家庭用ルームエアコンの冷媒、スプレー噴射剤、ふっ素樹脂の製造用原料
HCFC-123 大型冷凍機用の冷媒、工業原料
HCFC-124 冷媒
HCFC-133 工業原料
HCFC-141b 断熱材の発泡剤、電子機器や精密機器の洗浄剤
HCFC-142b 断熱材の発泡剤、工業原料
HCFC-225 ドライクリーニング溶剤、電子部品などの精密部品の洗浄剤

■排出・移動

 2010年度のPRTRデータによれば、わが国では1年間に合計で約22,000トンが環境中へ排出されたと見積もられています。業務用冷凍空調機器等の冷媒が修理の際などに漏れ出ることや、化学工業や精密機械器具製造業などのフロン類を使用したり製造している事業所から排出されたもので、すべてが大気中へ排出されました。カーエアコンの冷媒として使用されていたCFC-12は、自動車などからも徐々に環境中へ漏れ出ています。また、家庭からもスプレー噴射剤の使用に伴って排出されたり、エアコンなどに使用されている場合は徐々に環境中に漏れ出ています。この他、産業廃棄物処分業などの事業所から廃棄物として約170トン、下水道へ約0.11トンが移動されました。
 なお、製品を廃棄する際にフロン類が大気中に放出されないよう、家庭用冷蔵庫と家庭用エアコンについては特定家庭用機器再商品化法(家電リサイクル法)によって、業務用冷凍空調機器については特定製品に係るフロン類の回収及び破壊の実施の確保等に関する法律(フロン回収・破壊法)によって、カーエアコンについては使用済自動車の再資源化等に関する法律(自動車リサイクル法)によって、フロン類の回収が義務づけられています。

■環境中での動き

 環境中へ排出されたフロン類は、ほとんどが大気中に存在します。CFCは対流圏大気中では分解されにくく、成層圏(高度10〜50 kmの範囲)にまで到達すると、太陽の強い紫外線を受けて分解されます。
 成層圏にはオゾンが多く存在しており、このオゾンの多い層をオゾン層といいます。CFCやHCFCの分解により生成した塩素原子がオゾンと反応することによって、オゾン層が破壊されます。CFC-11は、半分の濃度に分解されるには長期間かかるといわれていますが、HCFCは対流圏で分解されやすい物質です。フロン類のオゾン層を破壊する力は物質により異なり、CFC-11、CFC-12は強く、HCFC-22、HCFC-225、HCFC-141b、HCFC-142bは比較的弱い物質です5)(上の表「PRTR制度の対象となっているフロン類」のオゾン破壊係数参照) 。
 北半球中緯度地域及び南極域の大気中のCFCの濃度は、1990年まで増加していましたが、1990年以降は増加が鈍り、ほぼ横ばい傾向にあります6)。CFCの代替物質であるHCFC-22、HCFC-141b、HCFC-142b、HCFC-134aは、増加傾向にあります6)

■健康影響

毒 性 フロン類の毒性は種類によって異なりますが、一般に弱いとされています7)

体内への吸収と排出 人がフロン類を体内に取り込む可能性があるのは、呼吸によると考えられます。現在のところ、体内へのフロン類の吸収と排出に関する知見はありません。

影 響 人の健康への影響を評価できる情報は現在のところ報告されていません。しかし、フロン類は成層圏オゾンを破壊することにより、間接的に人の健康へ影響を及ぼします。オゾン層は太陽からの有害な紫外線を吸収し、地上の生態系を保護しています。オゾン層が減少すると地上に達する紫外線が増え、皮膚がんや白内障の増加など、人の健康への影響が懸念されています8)

■生態影響

 現在のところ、わが国では水生生物に対する信頼できるPNEC(予測無影響濃度)は算定されていません。この物質そのものは水中に排出されることはほとんどなく、水生生物への毒性も弱いと考えられています7)。しかし、フロン類によって成層圏のオゾン層が破壊され、地上に降り注ぐ紫外線が増加すると、動植物の生息や生育に影響を及ぼすことが懸念されています。

性 状 無色透明気体:HCFC-133,HCFC-142b,HCFC-22,HCFC-124,CFC-13,CFC-115,
      CFC-12,CFC-114, HCFC-21
無色透明液体:HCFC-123,HCFC-141b,HCFC-225,CFC-113,CFC-11,CFC112
生産量9)
(2010年)
国内生産量:−(CFC),公表データなし(HCFC)
排出・移動量
(2010年度
PRTRデータ)
環境排出量:約22,000トン 排出源の内訳[推計値](%) 排出先の内訳[推計値](%)
事業所(届出) 6 大気 100
事業所(届出外) 30 公共用水域
非対象業種 46 土壌
移動体 1 埋立
家庭 18 (届出以外の排出量も含む)
事業所(届出)における排出量:約1,200トン 業種別構成比(上位5業種、%)
化学工業 42
精密機械器具製造業 16
鉄鋼業 8
食料品製造業 7
輸送用機械器具製造業 6
事業所(届出)における移動量:約170トン 移動先の内訳(%)
廃棄物への移動 100 下水道への移動 0
業種別構成比(上位5業種、%)
化学工業 29
熱供給業 18
飲料・たばこ・飼料製造業 12
一般機械器具製造業 11
精密機械器具製造業 7
PRTR対象
選定理由
オゾン層破壊物質
環境データ

大気

  • 有害大気汚染物質モニタリング調査(一般環境大気):
    CFC-11;測定地点数10地点,検体数120検体,最小濃度0.00083 mg/m3,最大濃度0.0023 mg/m3 ;[2009年度,環境省]10)
    CFC-12;測定地点数5地点,検体数60検体,最小濃度0.0016 mg/m3,最大濃度0.0042 mg/m3 ;[2009年度,環境省]10)
    CFC-113;測定地点数10地点,検体数120検体,最小濃度0.00031 mg/m3,最大濃度0.0009 mg/m3;[2009年度,環境省]10)
    CFC-114;測定地点数5地点,検体数60検体,最小濃度0.000081 mg/m3未満,最大濃度0.00018 mg/m3;[2009年度,環境省]10)
    HCFC-22;測定地点数5地点,検体数60検体,最小濃度0.00052 mg/m3,最大濃度0.01 mg/m3;[2009年度,環境省]10)
    HCFC-123;測定地点数4地点,検体数48検体,最小濃度0.0000084 mg/m3未満,最大濃度0.0003 mg/m3;[2009年度,環境省]10)
    HCFC-141b;測定地点数5地点,検体数60検体,最小濃度0.000098 mg/m3,最大濃度0.00073 mg/m3;[2009年度,環境省]10)
    HCFC-142b;測定地点数5地点,検体数60検体,最小濃度0.000036 mg/m3未満,最大濃度0.00043 mg/m3;[2009年度,環境省]10)
  • フロン等オゾン層影響微量ガス監視調査:
    北海道における大気中濃度; CFC-11; 233 pptv, CFC-12; 536 pptv, CFC-113;75.6 pptv, CFC-114; 14.9 pptv, CFC-115; 8.95 pptv, HCFC-22; 220 pptv, HCFC-141b; 23.1 pptv,HCFC-142b; 22.6 pptv,;[2010年12月,環境省]6)
    川崎市における大気中濃度(2010年3月〜2011年2月の中央値);CFC-11; 0.26 ppbv, CFC-12; 0.56 ppbv, HCFC-22; 0.39 ppbv, HCFC-141b; 0.042 ppbv, HCFC-142b; 0.030 ppbv;[2011年3月,環境省]6)
    (2005年3月〜2006年2月の中央値)CFC-113; 0.08 ppbv;[2006年3月,環境省]6)
  • 化学物質環境実態調査:
    HCFC-22 ;検出数57/57検体,最大濃度0.0045 mg/m3;[2003年,環境省]11)
    HCFC-123 ;検出数10/27検体,最大濃度0.00032 mg/m3;[2003年,環境省]11)
    HCFC-141b;検出数51/51検体,最大濃度0.0014 mg/m3;[2003年,環境省]11)
    HCFC-142b;検出数60/60検体,最大濃度0.0011 mg/m3;[2003年,環境省]11)
    HCFC-225ca;検出数38/42検体,最大濃度0.0045 mg/m3;[2003年,環境省]11)
    HCFC-225cb;検出数32/55検体,最大濃度0.0044 mg/m3;[2003年,環境省]11)
適用法令等
  • 特定物質の規制等によるオゾン層の保護に関する法律(オゾン層保護法):特定物質
  • 特定製品に係るフロン類の回収及び破壊の実施の確保等に関する法律
  • 特定家庭用機器再商品化法
  • 使用済自動車の再資源化等に関する法律
  • 日本産業衛生学会勧告:作業環境許容濃度
     CFC-11  1,000 ppm(5,600 mg/m3
     CFC-12  500 ppm(2,500 mg/m3
     HCFC-22 1,000 ppm(3,500 mg/m3

注)排出・移動量の項目中、「−」は排出量がないこと、「0」は排出量はあるが少ないことを表しています。

■引用・参考文献