リスクコミュニケーションのための化学物質ファクトシート
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作成年: 2012年

クロロメタン

別   名 塩化メチル、クロロメチル、メチルクロライド
管理番号 128
PRTR政令番号 1-154(化管法施行令(2021年10月20日公布)の政令番号)
C A S 番 号 74-87-3
構 造 式 クロロメタン構造式
  • クロロメタンは、主にシリコーン樹脂の原料に使われています。もともと自然界で生成される物質で、大気中にこの物質が含まれています。
  • 2010年度のPRTRデータでは、環境中への排出量は約1,600トンでした。すべてが事業所から排出されたもので、ほとんどが大気中へ排出されました。自然発生量のほうが人為的な排出量よりもはるかに多いと考えられます。

■用途

 クロロメタンは、常温では無色透明の気体です。ほとんどの有機溶剤に溶けやすく、主にシリコーン樹脂の原料として使われています。この他、乳化剤などに使われるメチルセルロースの原料、界面活性剤農薬の原料、発泡スチロール用などの発泡剤、熱に弱い天然物薬品の低温抽出などに使われています。
 クロロメタンは、自然界で生成される物質で、地球上のどこにでも大気中に存在しています。これまで海洋から発生すると考えられていましたが、最近の研究では熱帯の陸上から大気中へ放出されていることがわかりました。これは、木性シダやフタバガキなどの熱帯植物が、海塩に由来する塩素を揮発性が高いクロロメタンに変えていることによるものです。自然発生量のほうが、人為的な排出量よりはるかに多いと考えられます。

■排出・移動

 2010年度のPRTRデータによれば、わが国では1年間に約1,600トンが環境中へ排出されたと見積もられています。すべてがプラスチック製品製造業や化学工業などの事業所から排出されたもので、ほとんどが大気中へ排出されました。この他、化学工業の事業所から廃棄物として約2.9トンが移動されました。

■環境中での動き

 大気中へ排出されたクロロメタンは、化学反応によって分解されますが、大気中での寿命は1〜3年と推定されています1)。一部のクロロメタンは成層圏に到達し、紫外線との反応によって生成した塩素原子がオゾンと反応することによって、オゾン層が破壊されます1)。しかし、実際に成層圏に到達してオゾン層を破壊するクロロメタンの量の推定値はばらつきが大きく1)、クロロメタンがどの程度オゾン層破壊に寄与しているのかについては不明です。水中に入った場合は、主に大気中へ揮発することによって失われると考えられます2)3)

■健康影響

毒 性 クロロメタンは、変異原性試験で陽性を示したと報告されています3)。発がん性については、雄のマウスに腎臓での発がん作用が認められているものの、雌のマウス及びラットでは発がん作用は認められず、国際がん研究機関(IARC)ではクロロメタンをグループ3(人に対する発がん性については分類できない)に分類しています3)
 また、マウスにクロロメタンを含む空気を2年間吸入させた実験では、神経細胞の神経突起(軸索)のはれやせき髄神経の変性が認められ、この実験結果から求められる呼吸によって取り込んだ場合のLOAEL(最小毒性量)は103 mg/m3でした3)4)

体内への吸収と排出 人がクロロメタンを体内に取り込む可能性があるのは、呼吸や飲み水によると考えられます。体内に取り込まれた場合は代謝物に変化し、呼気とともに吐き出されたり、尿に含まれて排せつされますが、その代謝の速度には、個人差があると考えられます1)

影 響 もともと自然界に存在する物質のため、環境中からクロロメタンは検出されています。
 呼吸によってクロロメタンを取り込んだ場合について、環境省の「化学物質の環境リスク初期評価」では、神経細胞への影響が認められたマウスの実験結果に基づいて、無毒性量等を1.8 mg/m3としています4)。大気中の最大濃度は0.016 mg/m3であり、この無毒性量等を下まわっているものの十分に低いとは言えないため、情報収集に努める必要があるとしています4)。最近の測定における大気中の最大濃度は0.0015 mg/m3でした。
 なお、(独)製品評価技術基盤機構及び(財)化学物質評価研究機構の「化学物質の初期リスク評価書」では、呼吸によって取り込んだ場合について、環境省と同じマウスの実験におけるLOAELと大気中濃度の実測値を用いて、人の健康影響を評価しており、現時点では人の健康へ悪影響を及ぼすことはないと判断しています3)
 これまでの測定では、クロロメタンは河川などからも検出されていますが、食物や飲み水を通じて口から取り込んだ場合について、人の健康への影響を評価できる情報は現在のところ報告されていません。

■生態影響

 環境省の「化学物質の環境リスク初期評価」では、魚類の死亡を根拠として、水生生物に対するPNEC(予測無影響濃度)を0.55 mg/Lとしています4)。これまで得られた河川や海域の水中濃度はこのPNECよりも十分に低いため、この結果に基づけば水生生物への影響は小さいと考えられます。
 なお、(独)製品評価技術基盤機構及び(財)化学物質評価研究機構の「化学物質の初期リスク評価書」では、ミジンコの遊泳阻害を指標として、河川水中濃度の実測値を用いて水生生物に対する影響について評価を行っており、現時点では環境中の水生生物へ悪影響を及ぼすことはないと判断しています3)

性 状 無色透明の気体
生産量5)
(2010年)
国内生産量:約200,000トン
排出・移動量
(2010年度
PRTRデータ)
環境排出量:約1,600トン 排出源の内訳[推計値](%) 排出先の内訳[推計値](%)
事業所(届出) 100 大気 100
事業所(届出外) 公共用水域 0
非対象業種 土壌
移動体 埋立
家庭 (届出以外の排出量も含む)
事業所(届出)における排出量:約1,600トン 業種別構成比(上位5業種、%)
プラスチック製品製造業 69
化学工業 31
窯業・土石製品製造業 0
ゴム製品製造業 0
事業所(届出)における移動量:約2.9トン 移動先の内訳(%)
廃棄物への移動 100 下水道への移動
業種別構成比(上位5業種、%)
化学工業 100
PRTR対象
選定理由
変異原性
環境データ

大気

  • 有害大気汚染物質モニタリング調査(一般環境大気):測定地点数4地点,検体数48検体,平均濃度0.0013 mg/m3,最大濃度0.0015 mg/m3;[2009年度,環境省]6)
  • 化学物質環境実態調査:検出数48/48検体, 最大濃度0.016 mg/m3;[2001年度,環境省]7)

公共用水域

  • 要調査項目存在状況調査:検出数18/147地点, 最大濃度0.00015 mg/L;[1999年度,環境省]8)

地下水

  • 要調査項目存在状況調査:検出数0/23地点(検出下限値0.00001 mg/L);[1999年度,環境省]8)

底質

  • 要調査項目存在状況調査:検出数0/24地点(検出下限値0.001 mg/kg);[2002年度,環境省]9)
適用法令等

注)排出・移動量の項目中、「−」は排出量がないこと、「0」は排出量はあるが少ないことを表しています。

■引用・参考文献

■用途に関する参考文献