リスクコミュニケーションのための化学物質ファクトシート
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作成年: 2012年

3,5-ジクロロ-N-(1,1-ジメチル-2-プロピニル)ベンズアミド

別   名 プロピザミド、プロナミド、カルブ
管理番号 162
PRTR政令番号 1-188(化管法施行令(2021年10月20日公布)の政令番号)
C A S 番 号 23950-58-5
構 造 式 3,5-ジクロロ-N-(1,1-ジメチル-2-プロピニル)ベンズアミド構造式
  • 3,5-ジクロロ-N-(1,1-ジメチル-2-プロピニル)ベンズアミドは、プロピザミドとも呼ばれ、除草剤として使われる農薬の有効成分(原体)です。
  • 2010年度のPRTRデータでは、環境中への排出量は約30トンでした。すべてが農薬の使用に伴って排出されたもので、すべて土壌へ排出されました。

■用途

 3,5-ジクロロ-N-(1,1-ジメチル-2-プロピニル)ベンズアミド(以下「プロピザミド」と表記します)は、常温では白色の固体で、除草剤として使われている農薬の有効成分(原体)です。通常、水和剤製剤化されています。
 プロピザミドは、雑草の幼芽や幼根の生長点に作用して、生育を阻害することによって、雑草を枯らします。イネ科の雑草や広葉の一年生雑草に効果があり、畑やゴルフ場などで使われています。雑草の発芽前に散布すると効果が高いため、この除草剤を使用するのに適した時期は3〜6月、10〜11月とされています。

■排出・移動

 2010年度のPRTRデータによれば、わが国では1年間に約30トンが環境中へ排出されたと見積もられています。すべてが農薬の使用に伴って排出されたもので、すべて土壌へ排出されました。なお、廃棄物や下水道への事業所からの移動はありませんでした。

■環境中での動き

 土壌中へ排出されたプロピザミドは、実際の畑を使った実験では、56日で半分の濃度になったと報告されています1) 。水中に入った場合は、加水分解は受けにくいものの、実験では、光によって1.1日で半分の濃度になるとされ、また微生物分解もされると報告されています1)。大気中では化学反応によって分解され、0.4〜4.4日で半分の濃度になると計算されています2)

■健康影響

毒 性 わが国の食品衛生調査会はプロピザミドのADI(一日許容摂取量)を体重1 kg当たり1日0.019 mgと算出しており、これに基づいて水道水質管理目標値が設定されています3)
 なお、欧州委員会(EC)ではADIを体重1 kg当たり1日0.085mg、米国環境保護庁ではRfD(参照用量、ADIに相当)を体重1 kg当たり1日0.08 mgとしています4)。これらは、ラットに2年間、プロピザミドを口から与えた実験において、体重増加の抑制、肝臓重量の増加、甲状腺細胞の肥大などが認められ、この実験から求められる口から取り込んだ場合のNOEL(無影響量)が、体重1kg当たり1日8.46 mgであったことに基づいています4)

体内への吸収と排出 人がプロピザミドを体内に取り込む可能性があるのは、食物や飲み水によると考えられます。体内に取り込まれた場合は、動物実験によると、さまざまな代謝物に変化し、8日以内に95%がふんや尿に含まれて排せつされたと報告されています1)

影 響 厚生労働省が行っている「食品中の残留農薬の一日摂取量調査結果」によると、プロピザミドの平均1日摂取量は0.00169 mgと推計されています5)。これは、体重50 kg換算のADI(体重1 kg当たり1日0.019 mg)の0.18%に相当します5)。水道水や河川などからは水道水質管理目標値を超えるプロピザミドは検出されておらず、食物や飲み水を通じて口から取り込むことによる人の健康への影響は小さいと考えられます。

■生態影響

 環境省の「化学物質の環境リスク初期評価」では、藻類の生長阻害を根拠として、水生生物に対するPNEC(予測無影響濃度)を0.0032 mg/Lとしています2)。河川や海域からプロピザミドは検出されていませんが、検出下限値がこのPNECを超えているケースがあるため、水生生物への影響は評価できていません。

性 状 白色の固体
生産量6)
(2010年)
国内生産量:−(不明または出荷・生産なし)
輸 入 量:約61トン(原体)
排出・移動量
(2010年度
PRTRデータ)
環境排出量:約30トン 排出源の内訳[推計値](%) 排出先の内訳[推計値](%)
事業所(届出) 大気
事業所(届出外) 公共用水域
非対象業種 100 土壌 100
移動体 埋立
家庭 (届出以外の排出量も含む)
事業所(届出)における排出量:−トン 業種別構成比(上位5業種、%)
事業所(届出)における移動量:−トン 移動先の内訳(%)
廃棄物への移動 下水道への移動
業種別構成比(上位5業種、%)
PRTR対象
選定理由
経口慢性毒性生態毒性(藻類)
環境データ

水道水

  • 原水・浄水水質試験:水道水質管理目標値超過数;原水0/916地点,浄水0/919地点;[2009年度,日本水道協会] 7) 8)

公共用水域

  • 公共用水域水質測定( 要監視項目):指針値超過数0/846地点(検出下限値0.0008〜0.005 mg/L)2);[2010年度,環境省]9)

地下水

  • 地下水質測定(要監視項目):指針値超過数0/281地点(検出下限値0.0008〜0.005 mg/L)2);[2009年度,環境省] 10)

その他

適用法令等
  • 水道法:水道水質管理目標値0.05 mg/L以下(農薬類;プロピザミド)
  • 水質要監視項目指針値:0.008 mg/L以下
  • ゴルフ場使用農薬に係る暫定指導指針値:0.5 mg/L(排水口)
  • 食品衛生法:残留農薬基準 例えば,米(玄米)0.02 ppm,キャベツ0.1 ppm
  • 農薬取締法:登録農薬

注)排出・移動量の項目中、「−」は排出量がないこと、「0」は排出量はあるが少ないことを表しています。
※本物質の生産量は2010年農薬年度(2009年10月〜2010年9月)のものです。

■引用・参考文献

■用途に関する参考文献

  • 化学工業日報社『16112の化学商品』(2012年1月発行)
  • (社)日本植物防疫協会『農薬ハンドブック2011(改訂新版)』(2011年2月発行)

■適用作物に関する情報