リスクコミュニケーションのための化学物質ファクトシート
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作成年: 2012年

2,3-ジシアノ-1,4-ジチアアントラキノン

別   名 ジチアノン
管理番号 187
PRTR政令番号 1-215(化管法施行令(2021年10月20日公布)の政令番号)
C A S 番 号 3347-22-6
構 造 式 2,3-ジシアノ-1,4-ジチアアントラキノン構造式
  • 2,3-ジシアノ-1,4-ジチアアントラキノンは、ジチアノンとも呼ばれ、果樹園や畑で殺菌剤として使われている農薬の有効成分(原体)です。
  • 2010年度のPRTRデータでは、環境中への排出量は約59トンでした。すべてが農薬の使用に伴って排出されたもので、すべて土壌へ排出されました。

■用途

 2,3-ジシアノ-1,4-ジチアアントラキノン(以下「ジチアノン」と表記します)は、常温では水に溶けにくい褐色の固体で、果樹や野菜の病害に使われる殺菌剤の有効成分(原体)です。ジチアノン単独あるいは他の 農薬や銅剤と混合して、水和剤製剤化されています。
 ジチアノンは、細菌体内の酵素に反応して 代謝を阻害することによって、殺菌作用を発揮すると考えられています。薬害が少なく、効果が比較的長く続くとされ、ミカンなどのかんきつ類、リンゴ、ナシやモモなどの病害に使われます。銅剤との混合剤は根菜類の栽培に使われています。

■排出・移動

 2010年度のPRTRデータによれば、わが国では1年間に約59トンが環境中へ排出されたと見積もられています。すべてが農薬の使用に伴って排出されたもので、すべて土壌へ排出されました。この他、化学工業の事業所から廃棄物として約0.37トンが移動されました。

■環境中での動き

 土壌へ排出されたジチアノンは、実験では20〜35日で半分の濃度になったと報告されています1)。ジチアノンは土壌中では土壌粒子に吸着し1)、あまり移動しないと考えられます。水中では光分解や加水分解によって分解されると考えられますが、加水分解の速度はpHによって差があり、pH5では約10日間で、pH9では約10分で半分の濃度になったとされています1)

■健康影響

毒 性 ラットにジチアノンを2年間、餌に混ぜて与えた実験では、体重増加の抑制、赤血球の減少、肝臓と腎臓の重量増加が認められ、この実験結果から求められる口から取り込んだ場合のNOAEL(無毒性量)は体重1 kg当たり1日1 mgでした2)。また、イヌにジチアノンを52週間、餌に混ぜて与えた実験では、肝臓重量の増加や肝臓組織に病理学的変化が認められ、この実験結果から求められるNOAELも体重1 kg当たり1日1 mgでした2)
 これらの実験結果に基づいて、国連食糧農業機関(FAO)と世界保健機関(WHO)の合同残留農薬専門家会議(JMPR)はジチアノンのADI(一日許容摂取量)を体重1 kg当たり1日0.01 mgと算出しています2)。わが国の食品安全委員会もジチアノンのADIを体重1 kg当たり1日0.01 mgとしています3)

体内への吸収と排出 人がジチアノンを体内に取り込む可能性があるのは、食物や飲み水によると考えられます。体内に取り込まれた場合は、ラットの実験によると、ほとんどが代謝物に変化し、5日後には62〜70%がふんに、30〜34%が尿に含まれて排せつされたと報告されています2)

影 響 食物からのジチアノンの摂取量に関する情報は現在のところ得られていません。また、ジチアノンの環境中の濃度に関する測定結果はありません。

■生態影響

 ジチアノンは、魚類に対する有害性からもPRTR制度の対象物質に選定されていますが、現在のところ、わが国では水生生物に対する信頼できるPNEC(予測無影響濃度)は算定されていません。

性 状 褐色の固体  水に溶けにくい
生産量4)
(2010年)
国内生産量:−(不明または出荷・生産なし)
輸 入 量:約1.2トン(原体),約190トン(製剤)
排出・移動量
(2010年度
PRTRデータ)
環境排出量:約59トン 排出源の内訳[推計値](%) 排出先の内訳[推計値](%)
事業所(届出) 大気
事業所(届出外) 公共用水域
非対象業種 100 土壌 100
移動体 埋立
家庭 (届出以外の排出量も含む)
事業所(届出)における排出量:−トン 業種別構成比(上位5業種、%)
事業所(届出)における移動量:約0.37トン 移動先の内訳(%)
廃棄物への移動 100 下水道への移動
業種別構成比(上位5業種、%)
化学工業 100
PRTR対象
選定理由
経口慢性毒性生態毒性(魚類)
環境データ
適用法令等

注)排出・移動量の項目中、「−」は排出量がないこと、「0」は排出量はあるが少ないことを表しています。
※本物質の生産量は2010年農薬年度(2009年10月〜2010年9月)のものです。

■引用・参考文献

■用途に関する参考文献

  • 化学工業日報社『16112の化学商品』(2012年1月発行)
  • 日本植物防疫協会『農薬ハンドブック2011(改訂新版)』(2011年2月発行)

■適用作物に関する情報