リスクコミュニケーションのための化学物質ファクトシート
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作成年: 2012年

N,N-ジメチルドデシルアミン=N-オキシド

別   名 ジメチルラウリルアミンオキシド、AO
管理番号 224
PRTR政令番号 1-253(化管法施行令(2021年10月20日公布)の政令番号)
C A S 番 号 1643-20-5
構 造 式 N,N-ジメチルドデシルアミン=N-オキシド構造式
  • N,N-ジメチルドデシルアミン=N-オキシドは、主に台所用洗剤の成分として使われています。
  • 2010年度のPRTRデータでは、環境中への排出量は約1,800トンでした。下水処理施設から排出されたほか、家庭から排出されたもので、ほとんどが河川や海などへ排出されました。

■用途

 N,N-ジメチルドデシルアミン=N-オキシドは、水に溶けやすく、常温で白色の固体です。界面活性剤のひとつで、油汚れを水の中に取り込むことができること、泡立ちがよいことから、主に台所用洗剤の成分として使われています。また、業務用洗浄剤、シャンプーや化粧品・医薬品にも使われています。

■排出・移動

 2010年度のPRTRデータによれば、わが国では1年間に約1,800トンが環境中へ排出されたと見積もられています。下水処理施設から排出されたほか、家庭などから台所用洗剤などの使用に伴って排出されたもので、ほとんどが河川や海などへ排出されました。この他、化学工業などの事業所から廃棄物として約32トン、下水道へ約4.4トンが移動されました。
 家庭からの排出量は、ほとんどが下水処理場や合併浄化槽などの排水処理施設が整っていない地域の家庭から排出されたものです。2010年度末の下水道や浄化槽などによる汚水処理人口普及率は86.9%でした。家庭や店舗などから下水道等への移動量は、約2,600トンと推定されています1)。これらの地域から排出された場合は、N,N-ジメチルドデシルアミン=N-オキシドは排水処理設備でほとんどが取り除かれ、環境中へ排出されるのはごく一部になります。PRTRでは下水道でのN,N-ジメチルドデシルアミン=N-オキシドの分解率を66%として排出量を推計していますが1)、下水処理場では、N,N-ジメチルドデシルアミン=N-オキシドの99%以上が除去されるとの報告もあります2)

■環境中での動き

 水中へ排出されたN,N-ジメチルドデシルアミン=N-オキシドは、酸素が十分ある場合には微生物によって分解されますが、一部は水中の粒子などに吸着して、水底の泥に沈むと考えられます2)

■健康影響

毒 性 ウサギの眼に1 %溶液のN,N-ジメチルドデシルアミン=N-オキシドを点眼した実験及びウサギの皮膚に2 mgを塗った実験では、強い刺激性が示されています2)
 ラットに、N,N-ジメチルドデシルアミン=N-オキシドの割合が不明のアルキルジメチルアミンオキシドを104 週間、餌に混ぜて与えた実験では、体重増加の抑制がみられ、この実験から求められる口から取り込んだ場合のNOAEL(無毒性量)は、体重1 kg当たり1日50 mgでした2)

体内への吸収と排出 日常生活では台所用洗剤を使うことによって、N,N-ジメチルドデシルアミン=N-オキシドが皮膚にふれますが、皮膚からの吸収性は低いとされています2)。人がN,N-ジメチルドデシルアミン=N-オキシドを体内に取り込む可能性があるのは飲み水などによると考えられます。体内に取り込まれた場合は、尿に含まれて排せつされたり、呼気とともに吐き出されます2)。人の体内に入った場合、12時間以内に半分の濃度になると推定されています2)

影 響 口からN,N-ジメチルドデシルアミン=N-オキシドを取り込んだ場合について、(独)製品評価技術基盤機構及び(財)化学物質評価研究機構の「化学物質の初期リスク評価書」では、ラットの実験におけるNOAELと河川水中濃度の実測値及び食器などの被洗物残留濃度を用いて、人の健康影響を評価しており、現時点では人の健康に悪影響を及ぼすことはないと判断しています2)。また、呼吸から取り込む場合については、この経路からの取り込みは想定されないとして、この場合も、現時点では人の健康に悪影響を及ぼすことはないと判断しています2)。皮膚からの経路に関しては、リスク評価に必要な無毒性量を判断するのに適切な動物試験報告が得られないため、判断できないとしています2)

■生態影響

 環境省の「化学物質の環境リスク初期評価」では、藻類の生長に対する影響を根拠として、水生生物に対するPNEC(予測無影響濃度)を0.00004 mg/L としています3)。この環境リスク初期評価を行った時点では、河川や海域の水中濃度について測定データが得られておらず、水生生物へ影響は評価できていませんでしたが、最近の測定における河川や海域の水中濃度はこのPNECよりも十分に低いものでした。
 なお、(独)製品評価技術基盤機構及び(財)化学物質評価研究機構の「化学物質の初期リスク評価書」でも、藻類の生長阻害を指標として、河川水中濃度の実測値を用いて水生生物に対する影響について評価を行っており、現時点では環境中の水生生物へ悪影響を及ぼすことはないと判断しています2)

性 状 白色の固体  水に溶けやすい
生産量4)
(2010年)
国内生産量:約2,300トン(純分換算トン)
輸 入 量:約1,600トン
輸 出 量:約42トン
排出・移動量
(2010年度
PRTRデータ)
環境排出量:約1,800トン 排出源の内訳[推計値](%) 排出先の内訳[推計値](%)
事業所(届出) 0 大気 0
事業所(届出外) 54 公共用水域 100
非対象業種 5 土壌
移動体 埋立
家庭 42 (届出以外の排出量も含む)
事業所(届出)における排出量:約0.74トン 業種別構成比(上位5業種、%)
化学工業 94
飲料・たばこ・飼料製造業 4
食料品製造業 1
事業所(届出)における移動量:約36トン 移動先の内訳(%)
廃棄物への移動 88 下水道への移動 12
業種別構成比(上位5業種、%)
化学工業(藻類) 100
食料品製造業 0
PRTR対象
選定理由
生態毒性
環境データ

公共用水域

  • 化学物質環境実態調査:検出数9/123検体,最大濃度0.0000016 mg/L;[2004年度,環境省]5)

底質

  • 化学物質環境実態調査:検出数0/12検体(検出下限値0.0008 mg/kg);[2006年度,環境省]5)
適用法令等

注)排出・移動量の項目中、「−」は排出量がないこと、「0」は排出量はあるが少ないことを表しています。

■引用・参考文献

■用途に関する参考文献