リスクコミュニケーションのための化学物質ファクトシート
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作成年: 2012年

2,4,6-トリクロロフェノール

別   名 2,4,6-TCP
管理番号 287
PRTR政令番号 1-329(化管法施行令(2021年10月20日公布)の政令番号)
C A S 番 号 88-06-2
構 造 式 2,4,6-トリクロロフェノール構造式
  • 2,4,6-トリクロロフェノールは、染料や殺菌剤の原料として使われたり、木材防腐剤として使われています。
  • 2010年度のPRTRデータでは、環境中への排出量は約0トン(1 kg未満)でした。すべてが大気中へ排出されました。

■用途

 2,4,6-トリクロロフェノールは、常温で淡褐色の固体です。染料や殺菌剤の原料として使われたり、木材防腐剤として使われています。また、製紙工業において、紙面に付着する微生物の殺菌のためにも使われています。

■排出・移動

 2010年度のPRTRデータによれば、わが国では1年間に約0トン(1 kg未満)が環境中へ排出されたと見積もられています。すべてが大気中へ排出されました。この他、化学工業の事業所から廃棄物として約0.041トンが移動されました。

■環境中での動き

 大気中へ排出された2,4,6-トリクロロフェノールは、化学反応によって分解されますが、半分の濃度になるのに8.8〜88日かかるとされています1)。水中に排出された場合は、化審法の分解度試験では、微生物分解はされやすいとされています1)

■健康影響

毒 性 2,4,6-トリクロロフェノールは、いくつかの変異原性の試験において陽性を示したと報告されています1)2) 3)。発がん性については、雄のラットのリンパ腫と白血病、雌雄のマウスの肝腫瘍の発生が報告されています1)2)国際がん研究機関(IARC)では、2,4,6-トリクロロフェノールを含むポリクロロフェノールとそのナトリウム塩をグループ2B(人に対して発がん性があるかもしれない)に分類しています。
 また、雌のラットに生後3週間後から妊娠、哺育期を通して、2,4,6-トリクロロフェノールを飲み水に混ぜて与え、さらに、生まれた子に生後3週間後から12週間後まで、体重1 kg当たり1日3 mgの2,4,6-トリクロロフェノールを飲み水に混ぜて与えた試験では、生まれた子に肝臓重量の増加が認められました1)
 なお、2,4,6-トリクロロフェノールは、フェノール類として、臭味発生防止の観点から水道水質基準が設定されています2)

体内への吸収と排出 人が2,4,6-トリクロロフェノールを体内に取り込む可能性があるのは、飲み水などによると考えられます。体内に取り込まれた場合は、ラットの実験によると、代謝物に変化し、82%が尿に含まれて、22%がふんに含まれて排せつされたと報告されています1)4)

影 響 食物や飲み水を通じて口から取り込んだ場合について、環境省の「化学物質の環境リスク初期評価」では、生まれた子に肝臓重量の増加が認められたラットの実験結果に基づいて、無毒性量等を体重1 kg当たり1日0.3 mgとしています1)。2,4,6-トリクロロフェノールの食物中濃度や飲料水の測定データは得られていませんが、過去に限られた地域で測定された公共用水域海水の濃度などから推定すると、人が口から2,4,6-トリクロロフェノールを取り込む量は上記の無毒性量等よりも十分に低いとはいえないため、情報収集等を行う必要性があるとしています1)
 なお、呼吸から取り込んだ場合については、試験データが得られず、無毒性量等は設定できていません。

■生態影響

 環境省の「化学物質の環境リスク初期評価」では、魚類の死亡を根拠として、水生生物に対するPNEC(予測無影響濃度)を0.0041 mg/Lとしています1)。過去において限られた海域ではあるもののこのPNECを超える水中濃度が検出されたことがあるため、海域についてはさらなる情報収集が必要とされています1)

性 状 淡褐色の固体
生産量
(2010年)
国内生産量:公表データなし
排出・移動量
(2010年度
PRTRデータ)
環境排出量:約0トン(1 kg未満) 排出源の内訳[推計値](%) 排出先の内訳[推計値](%)
事業所(届出) 100 大気 100
事業所(届出外) 公共用水域
非対象業種 土壌
移動体 埋立
家庭 (届出以外の排出量も含む)
事業所(届出)における排出量:約0トン(1 kg未満) 業種別構成比(上位5業種、%)
全体の届出排出量が1 kg未満のため省略します
事業所(届出)における移動量:約0.041トン 移動先の内訳(%)
廃棄物への移動 100 下水道への移動
業種別構成比(上位5業種、%)
化学工業 100
PRTR対象
選定理由
発がん性,変異原性,生態毒性(魚類)
環境データ

水道水

  • 原水・浄水水質試験:水道水質基準超過数(フェノール類として測定);原水0/5202地点,浄水0/5386地点;[2009年度,日本水道協会] 5) 6)

公共用水域

  • 要調査項目存在状況調査:検出数4/50地点,最大濃度0.000088 mg/L;[2001年度,環境省] 7)

底質

  • 化学物質環境実態調査:検出数1/30検体,最大濃度0.012 mg/kg;[1996年度,環境省]8)
適用法令等
  • 水道法:水道水質基準値0.005 mg/L以下(臭味防止の観点からフェノール類として設定)
  • 水質汚濁防止法:排水基準5 mg/L(フェノール類含有量として設定)

注)排出・移動量の項目中、「−」は排出量がないこと、「0」は排出量はあるが少ないことを表しています。

■引用・参考文献

■用途に関する参考文献