リスクコミュニケーションのための化学物質ファクトシート
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作成年: 2012年

ヘキサメチレン=ジイソシアネート

別   名 ヘキサメチレンジイソシアナート、トロネートHD、1,6-ジイソシアナートヘキサン
管理番号 391
PRTR政令番号 1-435(化管法施行令(2021年10月20日公布)の政令番号)
C A S 番 号 822-06-0
構 造 式 ヘキサメチレン=ジイソシアネート構造式
  • ヘキサメチレン=ジイソシアネートは、ポリウレタン樹脂を製造する際の硬化剤として使われています。
  • 2010年度のPRTRデータでは、環境中への排出量は約1.8トンでした。すべてが事業所から排出されたもので、ほとんどが大気中へ排出されました。

■用途

 ヘキサメチレン=ジイソシアネートは、常温で無色透明の液体です。ポリウレタン樹脂を製造する際の硬化剤として利用され、これによってつくられたポリウレタンは、主にウレタン系塗料として使われています。ポリウレタンはこの他、塗膜、印刷インキ、接着剤やエラストマー(台車の車輪、ベルトコンベアのベルト等)などにも使われています。

■排出・移動

 2010年度のPRTRデータによれば、わが国では1年間に約1.8トンが環境中へ排出されたと見積もられています。すべてが中小の事業所を含む化学工業やプラスチック製品製造業などの事業所から排出されたもので、ほとんどが大気中へ排出されました。この他、化学工業や倉庫業などの事業所から廃棄物として約27トン、下水道へ約0.002トンが移動されました。

■環境中での動き

 ヘキサメチレン=ジイソシアネートは、容易に水と反応します1)。大気中へ排出された場合、水蒸気や雨にふれて、速やかに反応してヘキサメチレンジアミンとポリウレアから成る混合物となって、降雨などによって地表に降下すると推定されています1)。また、化学反応による分解速度は、1〜2日で半分の濃度になると計算されています1)
 水中に入った場合も速やかに加水分解され、二酸化炭素、ヘキサメチレンジアミンとポリウレアになると推定されています1)。ヘキサメチレンジアミンは、酸素が十分ある条件下では微生物分解されると推定されています1)。ポリウレアは水中の粒子などや水底の泥に吸着しやすいと考えられています1)

■健康影響

毒 性 ヘキサメチレン=ジイソシアネートを取り扱う作業者に、接触皮膚炎、ぜん息や気道感作性などの症例が報告されています1)。ヘキサメチレン=ジイソシアネートとそのトリマーを取り込んだ自動車塗装工の疫学調査では、末梢気道の病変が示唆される結果が報告されています1)
 ラットにヘキサメチレン=ジイソシアネートを含む空気を2年間吸入させた実験では肺胞の上皮の増生、間質性肺炎、肺胞マクロファージの増加が認められ、この実験結果から求められる呼吸によって取り込んだ場合のNOAEL(無毒性量)は0.035 mg/m3でした1)

体内への吸収と排出 人がヘキサメチレン=ジイソシアネートを体内に取り込む可能性があるのは、呼吸などによると考えられます。体内に取り込まれた場合は、ヘキサメチレンジアミンに加水分解されると推定されています1)

影 響 (独)製品評価技術基盤機構及び(財)化学物質評価研究機構の「化学物質の初期リスク評価書」では、ラットの実験におけるNOAELと大気中濃度の推計値を用いて、人の健康影響を評価しており、現時点では人の健康へ悪影響を及ぼすことはないと判断しています1)。なお、この評価書では口からこの物質を取り込むことは想定されないとしています1)

■生態影響

 現在のところ、わが国では水生生物に対する信頼できるPNEC(予測無影響濃度)は算定されていません。
 なお、(独)製品評価技術基盤機構及び(財)化学物質評価研究機構の「化学物質の初期リスク評価書」では、藻類の生長阻害を指標として、河川水中濃度の推計値を用いて水生生物に対する影響について評価を行っており、河川水中濃度がゼロと推定されることから、現時点では環境中の水生生物へ悪影響を及ぼすことはないと判断しています1)

性 状 無色透明の液体
生産量
(2010年)
国内生産量:公表データなし
排出・移動量
(2010度
PRTRデータ)
環境排出量:約1.8トン 排出源の内訳[推計値](%) 排出先の内訳[推計値](%)
事業所(届出) 47 大気 100
事業所(届出外) 53 公共用水域 0
非対象業種 土壌
移動体 埋立
家庭 (届出以外の排出量も含む)
事業所(届出)における排出量:約0.87トン 業種別構成比(上位5業種、%)
化学工業 49
プラスチック製品製造業 49
倉庫業 1
電気機械器具製造業 1
輸送用機械器具製造業 1
事業所(届出)における移動量:約27トン 移動先の内訳(%)
廃棄物への移動 100 下水道への移動 0
業種別構成比(上位5業種、%)
化学工業 63
倉庫業 37
電気機械器具製造業 0
プラスチック製品製造業 0
PRTR対象
選定理由
吸入慢性毒性,作業環境許容濃度,感作性
環境データ
適用法令等
  • 化学物質の審査及び製造等の規制に関する法律(化審法):優先評価化学物質
  • 海洋汚染防止法:有害液体物質Y類
  • 日本産業衛生学会勧告:作業環境許容濃度 0.034 mg/m3(0.005 ppm)

注)排出・移動量の項目中、「−」は排出量がないこと、「0」は排出量はあるが少ないことを表しています。

■引用・参考文献

■用途に関する参考文献