リスクコミュニケーションのための化学物質ファクトシート
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作成年: 2012年

N‐メチルカルバミン酸1‐ナフチル

別   名 カルバリル、NAC、1-ナフチル-N-メチルカルバメート
管理番号 427
PRTR政令番号 1-476(化管法施行令(2021年10月20日公布)の政令番号)
C A S 番 号 63-25-2
構 造 式 N‐メチルカルバミン酸1‐ナフチル構造式
  • N-メチルカルバミン酸1-ナフチルは、カルバリル、NACなどとも呼ばれ、畑地や果樹園などで殺虫剤として使われている農薬の有効成分(原体)です。
  • 2010年度のPRTRデータでは、環境中への排出量は約79トンでした。主に農薬の使用に伴って排出されたもので、ほとんどが土壌へ排出されました。

■用途

 N-メチルカルバミン酸1-ナフチル(以下「カルバリル」と表記します)は、常温で白色の固体で、殺虫剤として使われている農薬の有効成分(原体)です。通常、水和剤、乳剤や粒剤として製剤化されています。
 カルバリルは、昆虫体内のコリンエステラーゼという酵素の活性を阻害することによって殺虫効果をあらわします。野菜や果樹につくアブラムシ、ハマキムシ、ヨトウムシ、ハスモンヨトウなどの虫を駆除するため、畑や果樹園などで広く使われています。また、家庭でもダンゴムシなどの不快害虫駆除やアリ退治用の殺虫剤としても使われています。この他、カルバリルはリンゴの果実を間引くための摘果剤としても使われています。

■排出・移動

 2010年度のPRTRデータによれば、わが国では1年間に約79トンが環境中へ排出されたと見積もられています。主に農薬の使用に伴って排出されたもので、ほとんどが土壌へ排出されました。家庭からも、園芸用殺虫剤の使用に伴って排出されました。この他、化学工業の事業所から廃棄物として約1.1トンが移動されました。

■環境中での動き

 環境中のカルバリルの分解は、蒸発、光分解、土壌中・水中や植物中における化学的および微生物分解の程度により決定され、暑い気候条件下ではより分解が早いとされています1)。土壌中では通常の条件では8日から1カ月で半分の濃度になるとされています1)。水中では主に加水分解によって分解されますが、温度、pHやカルバリルの濃度によって分解速度は変わり、数分から数週間で半分の濃度になるとされています1)

■健康影響

毒 性 マウスにカルバリルを2年間、餌に混ぜて与えた実験では、雄に腎尿細管細胞がんなどが認められ、この実験結果から求められる口から取り込んだ場合のLOAEL(最小毒性量)は、体重1 kg当たり15 mgでした2)。この実験結果に基づいて、国連食糧農業機関(FAO)と世界保健機関(WHO)の合同残留農薬専門家会議(JMPR)は、カルバリルのADI(一日許容摂取量)を体重1 kg当たり1日0.008 mgとしています2)。 水道水質管理目標値は、ADIを体重1 kg当たり1日0.02 mgとして、これに基づいて設定されています3)。 なお、国際がん研究機関(IARC)は、発がん性に関して、人におけるがんのデータはなく、実験動物における発がん性の証拠は不十分として、カルバリルをグループ3(人に対する発がん性については分類できない)に分類しています1)

体内への吸収と排出 人がカルバリルを体内に取り込む可能性があるのは、食物や飲み水によると考えられます。体内に取り込まれた場合は、動物実験では、代謝物に変化し、一部は代謝されないまま、尿またはふんに含まれて排せつされたと報告されています2)

影 響 厚生労働省が行っている「食品中の残留農薬の一日摂取量調査結果」によると、カルバリルの平均1日摂取量は0.00209〜0.00448 mgと推計されています4)。これは、体重50 kg換算のADI(体重1 kg当たり1日0.02 mg)の0.21〜0.45%に相当します。また、水道水、河川や地下水から水道水質管理目標値を超える濃度のカルバリルは検出されておらず、食物や飲み水を通じて口から取り込むことによる人の健康への影響は小さいと考えられます。

■生態影響

 カルバリルは、甲殻類に対する有害性からもPRTR制度の対象物質に選定されていますが、現在のところ、わが国では水生生物に対する信頼できるPNEC(予測無影響濃度)は算定されていません。

性 状 白色の固体
生産量5)
(2010年)
国内生産量:−(不明または出荷・生産なし)
輸 入 量:約59トン(原体)
排出・移動量
(2010年度
PRTRデータ)
環境排出量:約79トン 排出源の内訳[推計値](%) 排出先の内訳[推計値](%)
事業所(届出) 0 大気
事業所(届出外) 公共用水域 0
非対象業種 84 土壌 100
移動体 埋立
家庭 16 (届出以外の排出量も含む)
事業所(届出)における排出量:約0.003トン 業種別構成比(上位5業種、%)
化学工業 100
事業所(届出)における移動量:約1.1トン 移動先の内訳(%)
廃棄物への移動 100 下水道への移動
業種別構成比(上位5業種、%)
化学工業 100
PRTR対象
選定理由
経口慢性毒性生態毒性(甲殻類)
環境データ

大気

  • 化学物質環境実態調査:検出数0/72検体(検出下限値0.000007 mg/m3)[1988年度,環境省]6)

水道水

  • 原水・浄水水質試験:水道水質管理目標値超過数;原水0/905地点,浄水0/896地点;[2009年度,日本水道協会]7) 8)

公共用水域

  • 化学物質環境実態調査:夏;検出数157/180検体,最大濃度0.0000099 mg/L,秋;検出数0/96検体(検出下限値0.00000053 mg/L)[2008年度,環境省]6)
  • 要調査項目存在状況調査:検出数0/80地点(検出下限値0.000005 mg/L);[2005年度,環境省]9)

地下水

  • 要調査項目存在状況調査:検出数0/40地点(検出下限値0.0004 mg/L);[2004年度,環境省]10)

底質

  • 化学物質環境実態調査:検出数0/69検体(検出下限値0.0205 mg/kg)[1988年度,環境省] 6)

生物(魚)

  • 化学物質環境実態調査:検出数0/3検体(検出下限値0.0013 mg/kg);[2005年度,環境省] 6)
適用法令等

注)排出・移動量の項目中、「−」は排出量がないこと、「0」は排出量はあるが少ないことを表しています。
※本物質の生産量は2010年農業年度(2009年10月〜2010年9月)のものです。

■引用・参考文献

■用途に関する参考文献

■適用作物に関する情報